2015年からUCIが限定的にロードバイクでディスクブレーキの使用を認める発表があり、2ヶ月間のレースにおけるテストを行い、その結果次第で正式認可の判断をするとの事が決まりました。
そんな矢先2016年のパリ〜ルーベで落車によって大事故が相次ぎました。ディスクブレーキのローターが現状はむき出しになっており、それに接触して左膝の脛骨がみえるほどの深い傷を負いました。
ロードバイクが油圧式ディスクブレーキ化することのデメリットもありながらも、メリットもありますので、両方紹介したいと思います。
1.ディスクブレーキのメリット
1.制動力が高い
リムブレーキは、リムをゴム製のブレーキシューで挟み込みストッピングパワー(減速力)を発生させるのに対し、ディスクブレーキはホイールハブに装着された板をキャリパー(ブレーキパッドの付いた制動装置)で挟みストッピングパワーを生じさせるのですが、油圧ディスクブレーキの場合は油圧の力で、人力の握力を増幅してストッピングパワーへ転換させます。
油圧式ディスクブレーキならば、リムブレーキと比較し、同じ握力で何倍ものストッピングパワーを得られる事が最大の特徴です。
高いストッピングパワーを得られるので、ダウンヒルなど高速域でのブレーキングには高い効果を発揮します。コーナーでの減速時にブレーキング時間が短く済むため、それだけタイム短縮に貢献できると言えます。
ブラケットを握りながらのブレーキングでも、下ハンでフルブレーキングをかけた場合のストッピングパワーを得ることが出来るため、ライディングポジションの自由度が高まります。平地巡航時において咄嗟のブレーキングが必要な場合でも、急制動をかける事が可能です。
ただし、それだけ高いストッピングパワーを得ることが出来るため、集団走行時などのブレーキングには特に気を遣う必要があります。
2.ブレーキタッチが一定
リムブレーキの場合、ブレーキシューの種類によってブレーキのタッチが異なります。
瞬間的にストッピングパワーが立ち上がり、一定ラインで効きが悪くなるものもあり、欲しい時に欲しいだけのストッピングパワーを得る事は、人力へ頼るリムブレーキの場合は構造上難しいのです。
油圧式ディスクブレーキの場合はブレーキのかけ始めから最大域まで一定のストッピングパワーを安定して得ることが出来るため、細かく制動をかけたい場面、特に繊細なコーナリングを求められるシーンでは有利になります。
3.雨や泥の影響を受けにくい
リムブレーキ最大の弱点は雨や泥などの影響でストッピングパワーが大きく落ちる事です。これはリムとブレーキシューの摩擦へ制動力を頼っており、リムは路面から近い場所を通るため、路面から巻き上げる水や泥に大きな影響を受ける事は、構造上避けられない事です。
ディスクブレーキの場合、ディスクローターがハブ位置に来るため、路面状況の影響を受けづらくなります。シクロクロスやマウンテンバイクにおいてはディスクブレーキが一般化した最大の要因はココにあります。
4.カーボンリムがブレーキ熱で溶ける心配がない
アルミホイールであれば熱耐性は比較的高いのですが、カーボンホイールの場合、リムブレーキではダウンヒルなどの場面ではカーボンリムが溶けてしまう心配があります。
長時間に渡り高い摩擦力を発生させると、リム面が高熱になってしまうからです。ディスクブレーキの場合はリムとブレーキが接さないため、リム面へ摩擦耐性の低い素材や塗料を使用した素材でデザインを施す事も出来る様になります。
5.リムのブレーキ面が平滑でなくてもいい
ディスクブレーキが一般化するとホイールデザインの常識が変わる可能性があります。ストッピングパワーを発生させるために平滑である必要があったリムが、極端な話、段状になっていても良いのです。リム外周までスポークを伸ばす、リムへ摩擦耐性の低い塗装を施す事が出来るなど、デザイン上の自由度が高まります。
2.ディスクブレーキのデメリット
1.使用パーツ点数が増えるため重量が増加する
リムブレーキと比較してパーツ点数が増える事と、ハブ周辺へかかる荷重が増えるため剛性を上げねばならず、ロードバイク全体の重量が増加します。100g程度は最低でも重くなります。
しかし、この重量増も今や軽量なフレームが多数登場しており、腰下重量も軽量なカーボンホイールで重量を削れば相殺できる範囲でもあります。
2.専用設計のフレームやホイールが必要
ディスクブレーキはリムブレーキと減速時の荷重がかかるポイントが異なります。
ハブ周辺へ大きな力がかかる事になるため、ホイール自体も剛性バランスが専用の設計を施されたものが必要です。スポーク本数を増やしたり、ハブ周辺の強度アップが必要になるため、どうしても重量増加を避ける事ができません。
また、リアブレーキもハブ周辺へ装着される事により、フレーム自体も専用設計が必要です。リアエンド周辺はブレーキユニットのサイズ分、幅が必要となるため、手持ちのフレームをディスクブレーキ化する事ができません。
さらに、ディスクブレーキとリムブレーキではストッピングパワーによる荷重のかかるポイントが異なり、左右の重量バランスや必要な剛性設計も異なります。これに応じ、フレームの設計も変える必要があります。
メリット・デメリットを見比べると、使用シーンによってはメリットの方が大きいと感じられます。特に高いストッピングパワーが求められるダウンヒルなどの高速走行時、雨天時には、油圧式ディスクブレーキの方が非常に有利となるでしょう。