ロードバイクのレースにおいて、大会前までトレーニングをしたにもかかわらず結果を残す人、実力を出せなかった人、それには多くの要因が関わってきますが、それらは主に3つに大別することが出来ます。


「ベース」と「ビルド」の重要性

ロードバイクトレーニングには、目的達成のためのトレーニングをこなす体の基礎を作る「ベース」と大会前目的達成のための能力を上達させる「ビルド」に分けることが出来ます。

LSDなど基礎的な持久力や技術を身につけるトレーニングはベースに当たり重要ですが、それだけでは本番で必要とされる能力を全ては獲得できません。レースで必要とされる強度でのトレーニングをしっかりとこなしているかが重要です。

シンプルに言うと、「ロードバイクはゆっくり走ればゆっくり長く走る能力が身に付き、速く走れば速く短く走る能力が身につきます」。当たり前な話かもしれませんが、人間の身体は実施したトレーニングに対して、適応し、作り替えられていくことで、能力が上達していきます。

結果として、「やったことは出来るが、やっていないことは出来ない」のです。

しかし、トレーニングをきちんと出来ているかどうかを確認する為には、トレーニングデータから“時間や強度の積算”を確認することが重要になります。ある特定のトレーニングゾーンや、決められた時間内において高い出力平均を出せたならば、それが右肩上がりで向上し、高いレベルでの能力アップを実際に感じることが出来ます。

これらを大会前に確認し、しっかりと達成できていたならば、実力の強化は十分であり、あとはその高めた能力を本番で発揮することが求められます。


「テーパリング」の重要性

本番で実力を発揮させるには、ここまでの能力向上のための強化トレーニング、また、その疲労から十分に回復を促す為の休息が必要となります。いくら能力が高くても、疲れて発揮できなければ結果も出すことができません。

実際にこの時、「疲れている」「疲れていない」というように自分の感覚だけで判断すると、実際の身体の状態とズレてしまう場合があるので注意が必要です。本番を直前にして、レースへの集中、やる気や興奮作用により、疲労を感じづらくなっている場合があるからです。

身体の状態を正確に把握するためには、トレーニングデータが役に立ちます。過去のデータ推移から、これだけのトレーニングを行った場合、疲労の回復にこれ位の時間がかかったとか、調子の良かったレース前のデータ推移はどうだったか、など、身体の疲労と回復に費やす時間を正確に判断して、レース前には完全に回復をさせておけるようにトレーニングの量や強度を調整していきます。これを「テーパリング」といいます。

能力向上を求めるあまり、過剰なトレーニングに起因する長期的なオーバートレーニング、短期的なオーバーリーチングという、コンディションが低下した状態に陥らないように注意が必要であり、計画的な強化トレーニングには計画的な回復を設けてあげることが望まれます。

本番前には、強化トレーニングとの間に調整期を設けてあげると、本番で疲弊しているというリスクを減らすことが出来ます。おおむねそれはレースウィークも含めて1~3週間になるでしょう。

強化トレーニングの期間が長くなり疲労蓄積も大きくなりそうな場合は、それだけ調整期も長くなります。逆に疲労の蓄積が小さければ、調整期は短くて十分です。

調整期の目的は、身体を完全回復させ、高い能力を発揮しやすい状態に仕上げることです。ポイントは、トレーニング量は減らして、強度を高めた「刺激」を入れることです。

例えば、直前での練習は時間を減らすことで、相対的に疲労を和らげます。また、レースのパフォーマンスを高める為にレースよりも高いパワーやスピードを刺激としてトレーニングを行うことで、そのキツさに感覚的に慣れると共に、筋肉と神経の出力発揮を鈍らせません。短時間の軽いトレーニングの中で、10秒~1分程度のダッシュや加速、あるいは1~3分程度のレース速度超の巡航などがそれにあたります。

また、この期間には、カロリー消費が減る為、食べ過ぎで過体重にならないようにしたり、風邪などの疾患、寝不足を防いで、体調を良い状態にキープするなどの注意が強く必要です。

これらの機能にはトレーニングダイアイリーに加え、安静時心拍数、睡眠時間とその質、体重、トレーニングにむかうフィーリング、気分、など具体的な数値、主観的なものを反映することが可能で、その推移を見ていくことが出来ます。

これらの個人データを入力することで、自分を振り返る良いタイミングになりますので、毎日、自分自身をよく観察でき、コントロールできるようになります。


「メンタルタフネス」の重要性

ここまでこれだけのトレーニングを積んで、準備をしてきたから絶対大丈夫!トレーニングは裏切らない!本番では必ず達成できる!、という「強い自信」を持つことが重要です。

ここまできたら、メンタルタフネスが勝敗を分けます。なぜなら、ペースを上げるのも下げるのも、自分の気持ち次第であり、いくら実力があってももうダメだと思った瞬間に出せる力は減ります。

逆に「まだイケる!」と思い、自分に集中して鼓舞し続ければ、ベストなパフォーマンスが発揮出来るはずです。この自信を得るためにも、トレーニングデータを見返し、自分がどれだけのことをやってきたのかを確認することで、「やれることをやった!」と思えるはずです。

また、刺激の強いトレーニングで高いパワーや速度を短時間でも発揮できれば、それも自信となります。本番ではアドレナリンなどの興奮作用物質や、集中力により、自信が増幅して、高いパフォーマンスに必ず繋がります。

自分を鼓舞する熱い思い、困難な状況でも折れない強い心と集中力、そして動作、操作を正確に行う冷静さを、全てあわせ持つメンタルタフネス、自信を持ってスタートからゴールまでを走りきってください。